古手の錫縁香合のなかでは珍しいほど地味。でも楚々として品があります。
艶の消えた黒漆に蒔絵の花紋(菊紋にも松紋にも見え、判断できません)を散らし、内側と底は梨地粉(細かい金粉)をまいただけです。
元来、蒔絵錫縁香合は、女性の化粧道具の手箱(長方形は羽黒入れだったとか)を転用したもので、その時代の流行がデザイン化されていて、どちらかというと華美な世界です。
ところが、この香合は初めからお茶の世界を意識してつくられたのでは、と思ってしまうほどに侘びた世界です。
なので、時代判定は難しく、大ざっぱに室町~桃山頃としておきます。
保存状態も良好です。
仕服と、「三宅亡羊所持」(亡羊は江戸前期の茶人)と書かれた箱が付きます。
(5,7×7,8センチ、高さ3,2センチ)