江戸後期の京焼の面白さを知ったのは、ここ数年のことです。
保全の写しものは、華美な世界に収まりきれないところが好きでしたが、
この伊賀のうつしには、驚きました。
骨太で彫刻的で、これほど造形力のある人だったとは。
支援者であった、三井か鴻池所蔵の古伊賀水指しをうつしたと思われますが、質の高い現代彫刻を見ている感覚に陥ります。
伊賀の土が使われていて、精作にしか押されなかったという「河濱支流」の丸印があります。
江戸時代の元箱があり、底には文政元年(1818年)の年号が入っているので、保全青年期(23歳頃)の作だということがわかります。保全の経歴や伝承には、意外なほど不明な点が多いので、貴重な事例かと思われます。
(高さ29センチ、口径9,5センチ、底径11センチ)