異様なパワーの木彫です。
眼には白い貝がはめ込まれ、角と牙を持ち、からだは女性です。
これは、ボルネオ島のカヤンダヤク(バハウ族)の「アソ」といわれる守護神の像です。
神話的動物の「アソ」は、龍(ドラゴン)の一種であることから、古代中国の影響が指摘されています。
「アソ」の造形は、ダヤクの住居(ログハウス)の柱や扉にレリーフとして残っていますが、立体彫刻として確認されているのは、数点のみです。
時代は、17世紀にさかのぼる可能性があり、アイアンウッドの重くて硬い木が摩滅・劣化しています。
20年近く前に、この守護神に出会ったときは、あまりの違和感に辟易としたものです。現代の空間に馴染むことを拒絶しているかのようでした。
ところが今では、縄文と同じように心揺さぶられ、ときには哀愁漂う造形に見えてくるのですから、人の感覚って不思議なものです。
プリミティブの奥深さを知ることができた木彫です。
(高さ46センチ)