渋くて、仏教美術の趣のある、蒲鉾型の小さな洋櫃です。
南蛮工藝といわれるもののなかで、最も初期のもののひとつと見ています。
洋櫃は、桃山~江戸前期の輸出商品でしたので、戦後、ヨーロッパから数多く里帰りして美術館に納まっています。
それらを見ると、注文主であったポルトガルやオランダの好みにあわせて、蒔絵や螺鈿の実に見栄えのよいものです。
この写真の洋櫃は、それらとは異質のものに見えます。
皮をなめし、唐草文や丸文が刻印され、黒漆が塗られていました。
今では皮が劣化して、ところどころ木箱の地肌が顔を見せています。
鍵は失われていますが蓋を開けることができ、オリジナルの古い錠を見ることができます。
(10×15,5センチ、高さ11,5センチ)